最初の夏休み(11)

ツアー後半には北京から西安に移動した。

国内移動なので飛行機は小型で高度もそれほど高くはない。
眼下に見える中国国土の景色を夢中で楽しんでいると
あっという間に到着した。

西安には秦や漢、隋や唐など歴代の中国の都「長安」が
おかれた。唐の時代に長安は世界一の都市でもあった。

着いてまず目についたのは、市内を取り囲む城壁だ。
600年ほど前につくられた当初の姿のまま現在も使われている。
こちらも古城壁としては世界一の規模で周囲が13.7キロにも及ぶ。
皇居の3倍だ。

北京では中国棋院にいって現地の人やプロと打ったりして、
囲碁の合間に観光、だったが、ここでは観光の合間に囲碁、と主従が
逆転した。色々なものを見て回りたい僕にはありがたかった。

兵馬俑ではまずその規模の大きさに衝撃をうけた。
奥行が200mはありそうな巨大な体育館に案内された。

おそらく発掘現場の上に建物をつくったのだろう。
僕と同じぐらいの大きさの兵士たちが何千体と並んでいる。
みなそれぞれ顔や持ち物が違う。

1974年に偶然発見されて20年がたった今も発掘が
続いている。ほかにもいくつか発掘現場があって、いま
掘り出している最中の様子も間近で観ることができた。

ここ西安はシルクロードの起点だ。そしてこういう文化
と文化が出会う場所は食事が美味しいと相場がきまっている。

昼には小麦の麺にイスラムの香辛料がはいったものと、
冷えてない青島ビールを楽しんだ。

「根本君、ちょっとそこの門のところに立ちなさい。
写真とってあげるから」

午後の自由行動の時間には、鈴木さんと2人で西安大学にまで
足をのばした。

鈴木さんは自分の写真はさておきなるべく僕を写して
くれようとした。囲碁のときはのぞいてだが。

「根本君、いまのは何だね」

目の前をかなりのスピードで自転車が走り去った。

よく見ると自転車のおじさんは両足を宙に浮かしている。
こいでいないのにペダルが猛烈な勢いで回転している。
ここは坂道ではない。

「何でしょうか。原付バイクに自転車のペダルがつい
たようなものですね。でも何でペダルが…」

遠目に見てもペダルの猛烈回転がユーモラスだ。
免許をもってない人の苦肉の策なのだろうか。

談笑しながら小1時間歩きまわったが、他人からは37歳違う
僕らはどう見えるのだろう。そう思うと少しおかしくなった。

親子にしても会社の上司部下にしても歳がはなれすぎている。
もちろんおじいさんと孫ではない。

今おもえばそのとき鈴木さんと僕は、ただの「友達」だった。

もとより盤上では友達同士のように囲碁を楽しんでいたが、
ここ中国にきてそれが盤外にも飛び火した瞬間だった。

記:根本

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