―いつも通るたびにこれ何だろう、って娘と話ししてたのよ。
綺麗な緑の葉っぱね。
前回紹介のパッションフルーツだ。
塀の外にはみ出したツルを道に出て切っていたとき、
隣に住むシニア女性に話かけられた。
そういえば先週も、これ何なのかしらと、通りすがりの老夫婦に
聞かれた。経験豊富なシニアでもわからないようだ。
今の時期、散歩していてよく気がつくのは赤く熟したザクロや、
まだ実が緑のイチジク、そして香りで惹きつけられる金木犀だ。
実がならない果樹は、ぱっと見何だかわからない。
つるぼけ実なしでも、注目を集めるという立派な役割があった。
―へえ、東京でも育てられるのね。
パッションフルーツと聞いて、彼女は目を丸くした。
南国のイメージが強いので当然だ。
グリーン棚には実はおろか花もどこにもないので、
テラスで育てている様子をスマホで見せた。
―2Fでは4つの8号鉢で育てています。
花が時計に似ているので時計草ともいうそうです。
―えっ時計草がパッションなの?
時計草、に強く反応したのでちょっと戸惑う。
=なのか≒なのかわからなかったので、一種だと思いますと
言葉をにごした。あとで調べると、時計草は500種もあって
パッションはその一つ、クダモノ時計草の実のようだ。
となりで「井戸畑会議」に参加していたつれが、さっと上にもどって
収穫したてのカゴをもってきた。
―あら綺麗な実ねぇ。鉢でこれが獲れるなんてすごいわ。
熟していそうな2玉を渡す。
―えっせっかく大事に育てたのに悪いわよ。
地植は見事に失敗したが、鉢では20個以上はとれそうだと
安心してもらう。恐縮させてはかえって悪い。
―この皮がもっとしわしわになってから食べると、酸味が
ほどよくぬけて甘いです。
最近知ったばかりの豆知識を、10年前から知ってる口ぶりで
さらっと伝える。
―あら嬉しいわ。ありがとう。ではゆっくり頂くわ。
ほんの数分のやりとりだが、素人菜園ではこの「偶然のひととき」を
大事にしている。
獲れたものを袋にいれて呼び鈴をならして届ける、ということは
あまりやっていない。
収穫中にお隣さんが出てきたら、採りたて野菜を土がついたまま、
手袋をつけたまま塀越しにひょいと渡したい。
力を抜いたほうが長くゆっくり楽しめる。
そんな気がしている。
記:根本
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