素人菜園帳(72)

先日、弟家族が野菜の収穫にやってきた。

「好きなのを3つずつとっておいで」

2人の姪っ子は軽くうなずくと、赤玉ねぎが30個ほど
植えられているエリアの前にしゃがんだ。

一番大きく見えるものから順に3つとった小学3年生の次女は、
ほこらしげにお母さんに見せに走る。

小学5年生のお姉さんは、真ん中ぐらいの大きさのものを3つ選んだ。
ゆっくり土を落としている。2人の性格がわかり面白い。

隣のニンニクエリアには、8ヶ月以上かけて育った苗が25本
植わっていたが、明らかに育ちが悪かったり枯れかけたもの10本は
収穫が済んでいる。

「これとこれ、一緒に抜いてごらん」

残りの中で一番太く大物が期待できる2本を指さした。
根元の茎の太さは3cm以上はある。これは楽しみだ。
育てた自分もまだこのクラスの収穫はしていない。

2人がスタンバイすると同時に、弟はカメラを構えながら
ベストポジションに移動する。

「もうとっていい?」

2人が同時に「えぃっ」と茎を持つ手に力を込めた。
すぐには抜けない。なかなか抜けない。

―えっ、あれっ、そんなに?

見ているこちらも手に力がはいる。

ようやく抜けた瞬間が、素人菜園で最高の一瞬だったのは間違いない。

見えている部分、特に茎が太く期待が大きかったこと。
期待以上の「大物」がとれたこと。
そして自分ではなく、姪っ子たちが嬉しそうに掘りだしたこと。

さすがジャンボというだけあって、
大人の女性の握りこぶしより大きいニンニクだ。

収穫したばかりの茎をはさみで切ると、透明な液が一気にあふれ出た。
つい今まで土から栄養を吸い上げていましたよ、と言わんばかりに。

液からだろうか。あたりにたちこめたニンニクの強い香りが
収穫気分を盛り上げた。

姪っ子が抜いたばかりのニンニクを借りて、僕も記念撮影をお願いした。
自分が獲っていないものを持って、撮ってもらいたくなったのは、
初めてだった。

記:根本

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