取りに行かない〜つながらせて満足という考え方〜

取りに行かない

相手の大石を取れそうな時、「ここで勝負を決めたい」と思ってしまいませんか。

積極的な姿勢はもちろん良いことです。
しかし「大石死せず」の言葉もあるように、つながっている石を取りきるのは意外と大変です。

大石を取りに行かず、あえてつながらせて満足という考え方があります。
全局の地合いが優勢なら、わざわざ危険な進行を選ばず、着実に勝利を掴みましょう。

今回は具体例として、「かけつぎ」で打たれた五段の方と井桁インストラクターとの3子局を紹介します。

(実戦図:黒△まで進んだ局面)

黒が先手を取り、△とボウシしました。
左下の白はまだ生きておらず、不安定な状態です。

同時に中央に大きな黒模様を描けるので、とても大きい一手です。

(参考図1:白1〜黒8)

白は動き出さざるを得ず、黒はケイマを連発して好調。そして黒6,8の手順で白を取りにいきました。
周囲の黒が強いので、白は危険な状況です。

ただし黒8は少し薄みがあるとも言えます。二間の距離と大ゲイマの距離になっていますから。
しっかりと封じ込められなければ、ここを起点に白から中央の黒模様になだれ込まれる可能性があります。

(参考図2:白9〜21)

実戦は黒12と強気で分断し、白も抵抗する進行へ。
白21以降も黒は中央をまとめるチャンスがあったのですが、実戦は白に隙をつかれ、中央に頭を出されてしまいました。
白は勝負形にできたと評価できます。この後はヨセ勝負の形勢になりました。

もともと地合いは黒有利でした。
さらに中央の模様もまとめられれば、黒の勝ちは揺るがなかったでしょう。

(参考図3:別案)

参考図1の黒6では、黒1と一間トビで十分でした。穏やかな手順ですが、ここでも白は右辺とつながらざるを得ず、黒が先手で左辺に回ることができます。
左辺に打てることは、上辺5線にあるキズも間接的に守れます。
弱い石もなく、地合いも優勢となり、黒が完勝できる一局でした。

大石を見ると焦って取りにいきたくなりますが、その瞬間に盤上を一度見渡してみてください。
地合い有利と判断できたら、つながらせても満足なのです。

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