素人菜園帳(24)

タッ、タタタタッ、タタタタッ、
タタタタタタ…♪

パーカッションのかすかな打撃音が響く。
指揮者の振る棒はわずかに揺れている。

最初はフルートだ。やさしい音色が印象的な旋律を
かなで始める。吹いているのはひとりだけだ。

指揮者が別の人に目をむけた。

次はクラリネットだ。フルートとはちがう甘く深い音が
同じメロディーを響かせる。

金管に見えて実はフルートやクラリネットと同じ木管楽器の
サックスも登場する。ソロで聞くとジャズとはちがった味わいがある。

珍しいファゴットやオーボエも参加してきた。
同じ吹く息で音が出る楽器なのに、どうしてこう違う音色が
うまれるのだろう。

気づくとフルートもクラリネットも本数が増えた。
ボリュームが一段階あがる。ずっと同じ旋律が続くが、
飽きるどころか期待がふくらんでいく。

指揮棒の振り幅が大きくなって、今度は金管楽器が
あらわれた。トランペット、トロンボーン、ホルンと
続く。最初は控えめだが、徐々に本気をだしてくる。

ついに大きなチューバや打楽器も加わった。
演奏開始から10分がすぎ、楽団の全員がようやくそろう。
それぞれの楽器が全力で音を奏ではじめ、クライマックスに
突入する。

ご存じ、ラヴェルの名曲、ボレロである。

さて場面はかわり、うちのテラスが映る。
2月下旬、まだ春の兆しを感じるのは少し早いが、
たまに15℃を超える日もでてきた。

12畳ほどのテラスにも冬越しした果樹は並ぶが
まだ野菜たちの緑は少ない。

最初は苺だ。冬眠からいちはやく目覚めたらしい。
咲いている花はひとつだけだ。

次はジャガイモだ。甘く栗のような味わいの品種
「インカの目覚め」を選ぶも、待てど暮らせど
目覚めない。

根菜に見えて実はレタスやキャベツと同じ、
葉菜の赤玉葱も大きくなってきた。
生で食べると炒めるのとはちがった味わいがある。
だが、どれも5cm以下の小さなものしか採れず、
つれに皮をむくのが面倒とこぼされた。

珍しい茎ブロッコリーも大きくなってきた。
別名スティックセニョール。英語とスペイン語の組合せが面白い。
種はみな同じに見えるのにどうしてこう違う野菜に育つのだろう。
だがやつらは間もなく、油断した菜園主のせいで
青虫にぼこぼこにされた。

気づくとクレソンやパクチーも大きくなっている。
だがパクチーは、温度の上昇とともにハダニが葉の
裏に大量発生しているのに気づかず、ほとんどダメになった。
「タイではパクチーは根を食べるらしいから」
苦しい言い訳にもつれは無反応だった。

ついに豆類の収穫もはじまった。
種を蒔き、苗を植えて水をやる。同じ作業の繰り返しだが、
飽きるどころか期待とさやはどんどんふくらんでいく。

見事なそら豆が6本できて獲れたてを堪能した。
上々のスタートをきったと思いきや、そのあと毎度の油断である。
アブラムシの強襲にあい、後半ほとんどまともに採れなかった。
「これは去年の枝豆といっしょね」
つれのことばが冷たくひびく。

さきほどのボレロは典型的なクレッシェンドだが、
こちらはしばしばデクレッシェンド。

期待が大きければ失望も大きい。
精神的な豆アレルギー、という新しい病気になりそうだ。

いよいよ初夏を迎える頃となり、テラスは緑いっぱいとなった。
さあこれからがクライマックスだ。
初挑戦のミニカボチャ「栗坊」も元気に育って
手のひらサイズ立派な実も一つなっている。

と思いきや、肥料をやりすぎで雌花がさっぱり咲かなくなった。
典型的な「つるぼけ」である。
「まさかこんな大きな鉢で一つということはないわよね」

これじゃーボロボロだー!

今朝はここで目が覚めた。

*ラヴェル作曲 ボレロ

記:根本

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