昨秋の東山魁夷展、ある絵の前で足がとまった。
ずっと遠くまで道がまっすぐ続いている。
なぜ「道」を題材にしたのか、何を伝えたいのかはわからないが、
不思議とその絵に魅せられてしばしたたずんだ。
気づくと僕は、絵の鑑賞時間から勝手にはなれ、タイムスリップして
自分の世界にはいっていった。
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こどもの頃から地図が好きで、暇があれば地図帳を本棚から
取り出してぱらぱらと眺めた。
今のように検索できないのがよかった。
日本で一番低い山とか最も長い駅名とか、
目をさらのようにして5歳下の弟と競争して探した。
これは地図をいくら見てもわからないことなので
きっと誰かから聞いたか本で読んだのだろう。
自宅そばの駅、「東中野」があることで日本で2番目
(いまは3番目)とわかってびっくりした。
それは、まっすぐな「直線鉄道」ランキングだ。
東中野から立川までの25キロ近くが直線らしい。
1番が北海道の室蘭なのは納得だが、その次が都会の東京になるのも
意外だった。
ある時、東中野の駅から目をこらして西を見た。
はるか向こうに三角形のサンプラザと中野駅らしきものは見えるが、
その先はもちろん見えない。
本当にずっとまっすぐなのか。
なぜこんな都会で直線ができたのだろう。
何を読めば、誰に聞けば答えがわかるかも、簡単にはわからなかった。
自分で考えても答えはでてこなかった。
いつしかそんな疑問も関心も、記憶のすみっこに
おいやられていた。
数年後の地理の時間のことだ。
先生が放った一言が、雷鳴のような響きをもって僕の耳にとどいた。
頭の隅でほこりをかぶっていた記憶が呼び覚まされた。
「ここには世界最長の直線の線路が通っています」
オーストラリアの南部、アデレードとパースの間に、
世界でもっともまっすぐな線路があるという。
その長さは東中野―立川のなんと20倍、
東京から京都ぐらいまでずっとずっとまっすぐだ。
先生の一言から、僕の頭の中では授業そっちのけで
「浪漫飛行」がはじまった。
「記:根本」
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