この2月に建てた我が家には3坪の小さな畑がある。
舗装して駐車場にする選択肢もあったが、あえて全面黒土を
いれて野菜の栽培に挑戦することにした。
両隣のシニア女性とは、この小さな菜園のおかげで
仲良くなった。
「あらっこれは何を育ててらっしゃるの?」
朝手入れをしていると声がかかる。
どうぞ、と門をあけて菜園の横でしばし立ち話に花が咲く。
「ミョウガはねぇ、ほっておくとどんどん根で広がるから
冬にスコップをいれて根を切ったほうがいいわよ」
初心者の僕にはありがたいアドバイスだ。
この土地にはむかし井戸があった。
これがほんとうの井戸畑会議なのかもしれない。
向かいの家には若い夫婦と小さな娘さんが2人住んでいる。
最近オクラを食べ始めたという、幼稚園に通う子に
オクラを自分で採ってもらうことにした。
「ねえねえがんばってー」
お父さんと一緒にハサミをもって採ろうとしている
彼女にむかって、向いの2Fの窓からかわいい声が届いた。
3歳ぐらいの妹だ。そのとなりにお母さんの笑顔も見える。
ちょっと緊張していたが、無事にはさみで収穫を終えると
にこっと笑ってお父さんに渡した。
「あっお花が咲いてる!きれい…」
隣の株に咲いている花に気づいたようだ。
オクラの花は野菜の花の中でもトップクラスに可憐で美しい。
ちょうど彼女の目線と同じ位置にある花をのぞきこんでいる。
目の輝きがどんどんアップしている。
「あとこれもあげる。この前ニンジンの葉っぱにいたんだよ」
以前お父さんから、見つけたらとっておいてくださいと頼まれていた。
アゲハの幼虫をエサとなる葉っぱといっしょに渡した。
「わぁ、おっきぃー」
緑と黒の縞模様は大人にはグロテスクだが、子供には違うようだ。
小さな目がさらにまんまるになった。
このサイズになると、ニンジンが一晩で丸裸にされてしまう。
目の敵にしていたのだが、こんなに喜んでもらえる方法があったなんて。
「ありがとう」
小さな声だった。
言い終わらないうちに後ろをむいて家にかけていった。
満面の笑顔なのが後姿からわかった。
記:根本
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