―あれ、これ、何でだろう。
通り過ぎる寸前、お店の前の看板が目に入って足をとめた。
NEW OPEN 12:34~18:00
吉祥寺で散歩の途中だった。いつも休日の散歩は高円寺、阿佐ヶ谷、荻窪、
西荻窪のどこかの駅周辺で、吉祥寺まで足を延ばしたのは2度目。
この通りは初だった。
開店時間が12:00でも12:30でもなく12:34にしているのは、
数字の並びで店主の洒落だろう、とすぐ気がついたが、
時計を見ると12:28でまだ開店前で透明の扉はしまっていた。
面白いね、と立ち去ろうとすると、店主が中から笑顔で扉を開けどうぞと。
―この時間はわざとですか?
―そうです、はい。3週間前にオープンしたばかりなんです。
「旅する本屋 街々書林」とある。
旅に関する本だけを集めた専門店だ。
店名もコンセプトも開店時間もこだわっているだけあって、
僕らはあっという間に店内に魅了された。
一冊ずつ丁寧に選ばれた本ばかりでなく、珍しい水彩毛筆や
「書くを愉しむ」という名前のノートなど、遊び心満載だ。
つれにもド真ん中だったようで、さっそく「参道めし」という本を
手に取り、もう買う気だ。
「旅のことばを読む」小柳 淳
帯にはこうあった。
ことばに出会ったとき、旅はもう始まっている。
カレル・チャペックからフーテンの寅さんまで
寅さんとあれば、手にとらないわけにはいかない。
手触り、色、装丁がとてもいい。
レジにもっていくと店主がにっこり。
―それ、私が書いたんです。
なに!ここは作家さん自らの手作り本屋さんなのか…。
すぐに話好きの店主と、まぁまぁ話好きの僕の高速かけあいが
始まった。店内はまだ誰もいなかった。
結局「旅の断片」「街と山のあいだ」若葉晃子の2冊も加え、
さらに先ほどのノートも。
つれは絵を描くのが趣味の義母に色鉛筆がわりにあげよう、
ということで先ほどの毛筆セットと本を。
会計はつれが5千円、僕が7千円也。
大人買い、というやつだ。
新刊書店に行く機会がめっきり減った昨今、
本が3冊で5千円を超えたのは久しぶりだ。
まだ読み始めてはいないが、いつも以上の偶然の出会いに、
この本には何か大きなものが隠れている、そんな気がする。
吉祥寺 街々書林
https://machi2.hp.peraichi.com/tabi/
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