タイトルにもあるが、この旅のキーワードは「まっすぐ」だ。
たまたま自宅そばに日本で有数の「まっすぐな線路」があり、
高校の授業で「世界一まっすぐな線路」が豪州にあることを知り、
憧れをもって初の海外旅行でやってきた。
だがこの旅の道のりはまったく「まっすぐ」ではない。
店名を見ずにアイスコーヒー飲みたさで飛び込んだのは
タスマニア行のツアーを扱う店だった。
まさか飲み物だけくださいとはいえず、興味ある顔をして話を聞く。
どうやらこれから出発の船に乗ると一晩かけてタスマニアまで行くらしい。
ということは、今晩の宿探しはしなくていい。
そう頭にうかんだ瞬間、10分前まで全く予想していなかった展開が
現実味をおびてきた。こんな理由で海を渡るのも面白いかもしれない。
タスマニアは形も大きさも、場所(緯度)も北海道に似ている。
予習する暇がなかったが、いったいどんなところなんだろう。
メルボルンを夕刻出た船は、1人ワクワクしながら雑魚寝する
僕を乗せて、14時間後に島の北の港町デボンポートに着いた。
タスマニアには足かけ5日間滞在して島を半周した。
1日は山や渓谷をジープで駆け巡る少人数のツアーに参加したが、
ほかはずっと1人だった。
こんな贅沢な旅はほかにない。時間にいっさい追われず、
行きたいところに向かうも、その場で過ごすも自由だ。
タスマニアにきてからつけ始めた旅日記にはこうある。
「バーニーにて。今日は一日中海岸にいたが誰にも会わなかった。
ひとり旅を実感した。夕食はビール1杯、ローストビーフに
ガーリックブレッド、しめて13$。おやすみなさい」
「ロンセストンにて。今日はカタラクト渓谷を歩いて少し疲れた。
とかげがいっぱいいた。途中、自転車でタスマニアを一周している
京大生に会う。日本語を話すのは5日ぶりだ」
メルボルンで宿探しに疲れたからここまでくることになったが、
よく考えるとタスマニアの小さな田舎町で宿を探すほうが
難易度は高い。野宿にならなかったのが幸運だったが、
そんなことにまったく気づかないほど僕はこの偶然の産物、
タスマニアぶらり旅に夢中になっていた。
先の予定が決まっていない。
これを贅沢と感じる習慣は、今思うとこんなときに
育まれたのかもしれない。
「記:根本」
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