笑顔の風景(7)

住職さんの柔らかな笑顔が好きだ。

笑顔というより微笑みに近いかもしれない。
口をあけて大声で笑うということはあまりない。
落ち着いた優しい心が顔に自然にあらわれる。
不思議とこちらもおだやかな気持ちになる。

そんな住職さんを二度、素で驚かせたことがある。
僕は人を驚かせるのも好きだ。

三年前の夏、その住職さんが長年務めた京都の西本願寺を
案内して頂くことになった。

彼は私の囲碁サイト『石音』の常連で、毎日顔写真を拝見して
もう8年にもなっていたが、会うのは初めてだった。

「あらーほんまにぎょうさんですなぁ」

目が真ん丸になって笑っている。無理もない。

最初は1人で伺う予定が、つれと2人でとなり、さらに
弟家族、妹家族、両親と増えて10名の「ご一行様」になっていた。

つれも一緒にいいですか、と確認した際に
何名でもどうぞ、と言われ、ついその言葉を真に受けたのだ。

普段非公開の場所を、ぞろぞろとついていく。
安土桃山時代から今に残る国宝が次々に登場する。
僕は感激と興奮で口があけっぱなしになった。

途中、国内最古の能舞台を前に、3歳と5歳の姪が
仲良く座っていた。国宝にそそうがないか少し心配になる。
2人を見つめる住職さんはいつもの笑顔に戻っていた。

そして一昨年の冬、琵琶湖のまわりを旅行中にふと
思い出した。

ーたしかあの住職さんのお寺は彦根のほうだったな…。

西本願寺を案内して頂いてから一年以上が経っていた。
旅の道すがらアポなしで訪問するのも面白いかもしれない。
普通の家だと躊躇するが、お寺は自由にお参りが出来て便利だ。

午後2時頃に到着したが、家の呼び鈴に反応はない。
つれと手分けして探すも、お寺も境内も人の気配はなく
ひっそりとしている。

留守かなと思ったそのとき、つれに気づいた住職さんが
何か御用ですか、とお堂から出てきた。

「あっ石音の根本です。突然すみません。
旅行中にちょっと寄らせていただきました」

「えっ!やぁほんまに?ほんまに根本さんや。
えらいこっちゃ、えらいこっちゃ」

僕をのぞきこむように確認すると、顔をくしゃくしゃにして
小走りで近づいてきた。喜びが伝わってこちらも嬉しくなる。

さっそくお堂の奥の「住職の秘密基地」に案内して頂いた。
毎日この3畳間でネット対局を楽しんでいるという。
石油ストーブの上でやかんが湯気をたてている。

「それは世の中には色々な人がおるけど、会うべき
人とは会えるように出来とるのですわ」

柔らかな笑顔でお抹茶をたてながら、偶然の再会を
こう表現してくれた。

冷えた身体が温まるのと同じく、心も熱くなった。

記:根本

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