SNSの登場もあって、つっこみ偏重の世の中になった。
それも漫才のようにボケを輝かすためのものではなく、
責めるニュアンスがつよいつっこみだ。
息苦しくならないように、ここはやはりボケの力を借りたい。
そんなボケの景色を切り取っていこうと思う。
4年前の夏の日のことだった。僕は運営する囲碁サイトの
常連の方と京都駅で待ち合わせをした。
旅行に行くついでに一度会いましょうとなったのだ。
その方は82歳。サイトでお互いの写真は見ているが
大分前の写真かもしれず混雑した場所での待ち合わせには
少し不安があった。その方からメールが届いた。
「新幹線中央口出たところで帽子をかぶって待っています」
まじめに提案しているのはわかるが、笑いがこみあげてきた。
真夏の暑いさなか、シニアはみな帽子をかぶっている。
会うのがよけい楽しみになった。
「いやー写真で見るのと違いますなぁ。それに大きいでんなぁ」
改札を出てきょろきょろ見渡していると、ひとりのシニアと
眼があった。ニコニコしながら話しかけてきた。
写真ではわからないが僕は長身なので驚かせてしまったようだ。
近くの喫茶店に入った。
世間話をすこししてからひとつ聞いてみた。
「どうして僕のサイトを選んでくださったのですか」
「それはね、ホームページの席亭の写真を見てこの人なら
信用できそうと思ったんですわ」
表情から本気でそう思ってくださっているのがわかる。
となりでつれが笑いを押し殺している。
僕も失礼がないようにとこらえるのに必死だ。
出会って最初のひとことは「写真と違いますなぁ」だった。
つっこむのは簡単だがボケるのは難しいと言われる。
たしかにそうかもしれない。
だが自分で意識してなくとも相手がボケを感じることもある。
それでいい。その瞬間、2人の距離は間違いなく縮まる。
あれから4年が経ったいま、はっきり言える。
歳が離れた2人にとってボケは大事なスパイスだ。
それも今まで意識はしてなかった。
記:根本
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