ひとつの旅で3度も自分の小ささを実感するのも珍しい。
1度目は、屋外五重塔では日本で1番小さな、
室生寺五重塔(国宝)の前で。
(行き当たりばっかし31)
2度目は、木造では日本で1番大きな、
長谷寺の十一面観音菩薩立像(重文)の前で。
(行き当たりばっかし32)
3度目は、東大寺の大仏殿につぎ日本で2番目に大きな木造建築
(明治以降の近代建築はのぞく)といわれる、
金峯山寺の蔵王堂「国宝」の前で。
高さ34mという。現代でいえばマンション9階建てなのに木造、
ということだ。縦横も36mの正方形、つまりほぼ立方体の
この建物が今から400年以上も前に、秀吉の力で建て直された。
中には68本もの巨木の柱があったが、驚くべきものを目にした。
どの木もすべて面どりも製材もされていない。
ただ木の枝を落としただけの、でこぼこだらけの杉やひのきの
巨木だった。こんなのは他の寺社であまり見たことがない。
仏教とはちがい、日本古来のオリジナルな宗教といえる修験道。
その整地にふさわしい建物だ。
なかには、ナシやツツジ(!)の巨木もあった。ツツジの巨木…。
自分が53年生きてつかんだ常識からは、余裕ではみ出している。
外に出て誰もいない蔵王堂の前で両手を広げてみた。
が、ぱっと見ると、蔵王堂だけを写したように見える写真だ。
自分の小ささがきわだった格好である。
いや、待てよ。
そもそも、自分をちょっとでも大きく見せようだとか、
はるか昔から風雪に耐え鎮座している塔や建物と比べようとか、
思うこと自体が、猛烈に小さいのではないか。
翌朝6時半、この蔵王堂で「朝勤行」に参加して
山伏たちの勇壮なほらがいの音を聞きながら、気がついた。
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