もっとボケよう(8)

ふとこんなことを思った。

10回もボケればさすがに「わざと」だとなるだろう。
だから「と」ぼけるは「ボケる」が進化したものだ。

ほんとうだろうか。

僕のまわりには「とぼける」の達人が多い。

囲碁仲間のKさんは、水彩画の教室に通って4年になる。
発表会に行くと毎回珈琲豆を帰り際に渡してくれる。

「あっそうそう、そういえば珈琲は飲むかい。
これたいしたもんじゃないけど」

あたかも今さっきもらったものだけどよかったら、
と、なんとも軽いが、中身はかなり高級な豆だったりする。
きちんと準備している。

いまでは豆より毎度のやりとりが楽しみだ。
嬉しい気持ちを簡単には手に入らない豆にこめるのも、
たまたま持っていた風で渡すのも、照れ隠しなのだろう。

僕のサイトの会員さんでいつも季節ごとに贈り物を
届けてくださる方がいる。事前にメールがくるのだが、
「のしはつけません」とある。
だが届いた品物にはきちんとのしがかけられていて、
ひとこと「楽しさの御礼」と書かれている。
のしのくだりにパンチが利いて、心に嬉しくひびく。

長年公私にわたり親しくさせて頂いた方のお宅には
何度も伺った。(前連載「最初の夏休み」の鈴木さん)
3回目ぐらいだろうか。奥様から印象的な一言を頂いた。

「あなたはもうお客様扱いしませんから」

いったい次回はどうなるのだろうと興味がわいたが
それ以降もかわらぬ丁寧なもてなしが続いた。

それは僕に余分な気を使わせないための一言、
いわば、気づかいを気づかせないようにする
気づかいだった。

記:根本

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