極北にて(前編)

もう二度とここには来ないだろう。
そんな場所に行くこともある。

そこについ二度行ってしまった。
そんなことが起きることもある。

北緯71度、北米大陸最北端の町、アラスカのバロー。
あと東京から鹿児島ぐらいの距離で北極点というところに
エスキモー4千人が暮らしている。

1993年と98年の2月、マイナス40℃をしばしば下回る
極寒の季節にここを訪れた。
旅の醍醐味、非日常を楽しむには最高の季節、最高の場所だった。
自然が厳しい場所では、その分、人があたたかかった。

最北端のバローに行く前、アラスカ中心部のフェアバンクスという町にいた。
アラスカの玄関、アンカレッジから12時間かけて電車でやってきた。

最初の日、宿のおばさんに「今日は暖かいわね」と言われて、
聞き間違えたと思った。温度計はマイナス18℃を示していた。
一週間たった今、少し慣れたのだろうか。
「そうだね、昨日よりちょっと暖かいね」と返す余裕が出てきた。

「おい、何してるんだ」
橋の上から声がかかった。地元の親子連れだ。
深夜1時、僕はフェアバンクス市内の凍った川の上を一人で歩いていた。
怪しい奴に思われたに違いない。
僕はできる限りの笑顔で答えた。

「オーロラを探しているのです」
橋の上の親子が何やら話している。アドバイスをくれるのだろうか。
「ごめんな。彼女がどこに住んでいるか知らないんだ」
意味が分からなかった。誰の住所も聞いていないのだ。

その夜オーロラは現れなかった。
一晩に1、2回、1回15分から30分の天体ショーだ。
出会うのは簡単ではない。

翌朝、朝食を食べながら、昨晩のことを宿のおばさんに話した。
オーロラがここではノーザンライツと呼ばれていることを知った。
部屋に戻ると、果物がいくつかはいったカゴの上にメモが置いてあった。

「HELP YOUR SELF TO」

これはたしか「ご自由にどうぞ」のはずだ。
ぽっと心が温かくなった。

翌日、太陽の光がまぶしく輝くなか、バローに向かう
30人乗りの小型飛行機に乗り込んだ。
フェアバンクスより北は陸路がないから飛行機でいくしかない。

アンカレッジ、フェアバンクス、バロー。徐々に北に向かっている。
緯度が高くなるのと僕のテンションが高まるのが、見事に調和した。
飛行機の高度はそれほど高くなかった。

すぐ眼下には凍てついた荒涼とした大地、ツンドラが広がっていた。
目に入るすべてが白かグレーで、緑は皆無だった。

「記:根本」

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