―はじめはあまり好きじゃない、というか、
どちらかと言えば嫌いでした。
―それがだんだん普通になって、気がついたら
好きになっていました。
―今はもう毎日会わないと気がすみません。
誰への告白かというと、「人参」である。
毎朝かかさず人参ジュースを飲み、時にぬか漬けに、
時にスティックで味噌をつけて食べる。サラダもある。
数えると年に200本近くいきそうだ。
人参にもし何か有害物質が見つかったら、
―お先に失礼しまーす。
となるのは間違いない。
人生を春夏秋冬でいえば、間もなく50歳の僕は青春、朱夏ときている。
このあと白秋、玄冬と続く。
色は青→朱→白→黒の順だ。
人参は基本朱色だが、白や黒もある。だが青はない。
青の時代が終わってから好きになったのは偶然だろうか。
身体がだんだん錆びてきて、栄養というものが気になりはじめた。
Carrotとい名はカロチンからきていると知ってさらに気に入った。
直球で潔いネーミングだ。
スーパーでほうれん草が「鉄分草」であれば、
―えっと鉄分が多いんだっけ。ビタミンCだっけ。
と考える必要がない。
素人菜園では昨春、昨秋に続く3回目、今年の春蒔きから、
普通の色、サイズ以外の人参に挑戦した。
白い人参のような根菜はパースニップである。
今回は深さ42cmの大型プランターで8本育てた。
通常の人参は種まきから収穫まで100日ほどだが
それより1ヶ月以上余計にかかる。
その分、期待値もあがる。
欧州原産で生食はせず、葉も食べないところが人参と違うが、
別名白ニンジンとかサトウニンジンと言われている。
葡萄なみに甘いという情報に接し、わくわくする。
だが人参と葡萄がどうしても重ならない。
―ほんとかな。イチゴ味の歯磨き粉、みたいなこと?
よくわからない例えが頭に浮かんで苦笑する。
玉ねぎやカボチャ、トマトと一緒に
オーブンでローストしたものを食べてみる。
味つけはオリーブオイルと塩コショウだ。
―うーん、なんなんだ、これは…。
ゴボウのような繊維も少し感じるが、
まずカボチャやサツマイモに似たほくほく感が口に広がる。
あとからくるのが人参らしからぬ甘味と、
鼻に心地よくぬけるハーブな香りだ。
冬越しのものはもっと甘くなるというから
ひょっとして…葡萄…?
種の袋を確認するとまだたくさん残っている。
お盆をすぎてからまた蒔いてみよう。
五木寛之氏によれば白秋は60歳頃からというが、
それより10年早く白の時代に突入だ。
パースニップ、一緒に育てませんか。
記:根本
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