素人菜園帳(50)

歳末もせまった晴れ渡った朝のことだった。
素人菜園史上1、2を争う、感情を激しくゆさぶる瞬間があった。

8月上旬に種を蒔いてから4ヶ月半が経った。
正月用にと育ててきた人参を収穫した。

人参やビーツ、大根などの根菜は、収穫間近になると
土から少し顔、というか頭を出す。
毎回その大きさから全体を想像して期待が膨らむ。

2つのプランターで育つ16本の中で、一番育ちが
よさそうなものに狙いを定めた。
少し枯れかけた葉っぱを束ねて持ちその手に力をこめる。
なかなか抜けない。思った以上の大物かもしれない。

えいっとさらに力を入れる。
その瞬間、急に手ごたえがなくなった。
僕の右手は、いきなり無重力空間に放り出された。

―あれっ…。

収穫した獲物を見た。

一瞬の間のあと、身体の奥のほうから大きな笑いが、
止められない迫力とスピードで押し寄せてきた。

―こっ、こっ、これっ、予想と大分違うんだけど…。

アメリカ映画に出てくる、グラマーなのに超足が細い
ソウルフルなシンガーみたい、と言った人がいた。
見事なたとえだ。

―おまえはいったいどうしてそうなったんだ。

もう一度じっくりながめて聞いてみる。

隣で育つ「紅くるり大根」だと勘違いしたのか。
途中でやっぱり俺は人参だと気づいたのか。

それとも、最初だけ栄養を獲り過ぎてあわてて
ダイエットに励んだのか。

―こういう瞬間があるから、やめられないんだな。

奴の姿はこれからもずっと忘れないだろう。
期待を裏切られたはずなのに、マイナスの感情が
すこしも沸いてこない。

むしろ、次に採れた「普通」の獲物を見たときに
がっかりする自分までいた。おどろきだ。

だれに頼まれたわけでもなく、特に目的もはっきり持たず、
心のむくままはじめた素人菜園。

2年目も多くの楽しい時を過ごした。

今年のラストを飾るにふさわしい「金時」人参だった。

記:根本

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