向かいの家の5歳の男の子とは、時折「2人きりの時間」
を楽しんでいる。
幼稚園に送るお父さんが玄関から出てくる前、ほんの1分程度の
時間だ。いつも彼が先に元気よく飛び出してくる。
彼の背丈だとちょうどいい。素人菜園と道路を隔てる目隠し塀と
ブロックの間に隙間があいている。
こちらが朝の水やりをしているとそこからのぞいて元気よく
―おはようございます!何してんの?
以前こんなことがあった。
お父さんがなかなか出てこない。時間をもてあそばした彼はうちの
門の前でしゃがみこんだ。どうしたの?とたずねて門をあけると
こちらを見上げる目はとっても澄んでいた。
―あのね、うんちがくさいって言われちゃったの。
向かいの野菜オジサンであれ誰であれ、ともかく聞いてほしかった
のだろう。悲しい目ではない。朝食前の意外な告白に、こちらは
笑いを必死にこらえながらまじめに返した。
今朝、玉ねぎにかぶせておいた不織布をとり、枯れた葉を取り除いて
いたらまた声をかけられた。
―紫の野菜とれる?
えっムラサキのヤサイ…ってなんだ。
一瞬考えた。
ナスは作ってないな。紫のトマト(トスカーナバイオレット)
は採らせてあげたっけ。
―ばいばい!
お父さんが出てきたので彼は駆けていった。
あっそうか。赤玉ねぎのことか。
アーリーレッドは確かに赤ではなくムラサキだ。
去年の6月、ちょうどいま作業をしている場所で
彼に採らせてあげたことがあった。
場所と野菜がしっかり彼の記憶に刻まれている。
朝から小さなプレゼントをもらった気分になった。
記:根本
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