年末が近づいてきた。
何年か前の紅白を実家の掘り炬燵で見ていたときのことだ。
台所の片づけを終えた母がやってきて隣でミカンを食べ始めた。
「最近、大勢のグループが増えてわけわかんなくなっちゃったわ」
画面にはAKBが映っていた。
シニアは1人、多くても2人か3人までの歌い手が好みのようだ。
続いてエグザイルが登場した。
「あら、このエグザイルにAKIRAっているでしょ。
うちの浩(弟)に似てると思わない?」
―(ずこっ) いまわけわかんないって言ったばかりでしょ…。
「そうそう、あとHIROSHIもいるでしょ。だけどHIROSHIは
明(僕)には似てないのね。ややこしいわ、ほんと」
―(結構くわしいじゃん) ややこしくないでしょ。
それにHIROSHIじゃなくてHIROでしょ。
母はそのあとも僕のつっこみを無視してつぶやき続けた。
3年前に両親をつれて伊豆の温泉宿に行ったときのことだ。
チェックインしたあとラウンジでくつろいでいた。
「伊豆にはよく来るんだ。囲碁合宿とかでね。食事は夕食も
バイキングだったな」
僕が何気なくいったことばに父が反応した。
半分ほど飲み干した生ビールのグラスを右手に持っている。
「私はあのバイキングとか食べ放題とかいうのは嫌いです。
なんかいやしい感じがしませんか。少しでも元をとってやろうという」
つれもいるからか丁寧語だが、相変わらず極端な意見だ。
「いや、そうかな。今は食べ放題というより、好きなものが
選べるっていうニュアンスが強いけど。高級旅館でも朝食は
ビュッフェ形式が多いよ」
父は僕の返しには答えず続けた。
「ところで明、ここは何杯飲んでもいいのかい。
それじゃビール、もう一杯だけもらおうかな」
隣でつれが爆笑している。
「自分のことを棚にあげる」
僕の棚がいつも斜めになっている原因を見つけたようだ。
記:根本
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