まっすぐへの憧れ(8)

カンガルー島からアデレードに戻ってきて
すぐに帰りの飛行機のリコンファームをする。

旅はあと1週間。これを忘れると予約が取り消されることもあると
ガイドブックで読んだ。お金を既に払って予約しているのに、
なぜこんな仕組みなのだろう。

いよいよ夕方からこの旅のメインイベントが始まる。
「世界最長直線」の鉄道に乗って西海岸のパースまで行く。

太平洋に面する東海岸のシドニーから、インド洋に面する
西海岸のパースまで、4352kmを3泊4日で結ぶ
長距離列車『インディアン・パシフィック』。

その2/3ほどの区間、アデレードからパースまでの2700kmを
2泊、40時間かけてはしりぬける。

車両は30両ほど連結されていて長さがなんと1km近い。
新幹線2編成を連ねるより長いのだ。
東京の地下鉄だと駅についたとき車掌がまだ前の駅となってしまう。
車内アナウンスはどうなるのか考えると少しおかしい。

チケットは食事がついて400$もした。
今回は23日間で宿泊費の合計が190$、食費が330$だった。
この1日半のために残りの3週間を切り詰めた。一点集中だ。

シドニーの宿で仲良くなった旅人が、シドニーからパースまで
65時間、個室と比べて1/3の値段の「椅子席」を使うと言っていた。
足かけ4日間も椅子席でどう過ごすのか。世界の旅人のパワーはすごい。
メルボルンで再会したアイスランド人のジョードの顔が浮かんだ。

部屋は驚くほどコンパクトにまとめられている。
1畳半ほどのスペースに、テーブル2つ、ベッド、椅子、トイレ、
洗面台、鏡に洋服ダンス、靴箱に物置まであった。
清潔で機能的な空間だ。

ここがこれから40時間、自分の城になると思うと
ワクワクが最高潮に達した。

発車するとすぐに車掌が検札がてらウェルカムドリンクの
シャンパンとクッキーをもってきた。若干20歳の若造が
それだけでちょっと偉くなった気分になる。
数時間前までと同じ人、同じ旅の道中とはとても思えない。

狭いバスの席で2泊、フェリーの雑魚寝で2泊、
泊まった宿は相部屋だったりお湯が出なかったり。
そのあとのウェルカムシャンパンだから無理もない。

列車はすぐに街をはなれ、車窓はあっという間に
夕陽に照らされた土で真赤にそまった。
かなりゆっくり進んでいるように感じるが、
車窓が切り取る景色が大きいからだろう。

夕食は食堂車で2回転目が割り当てられた。
明後日の朝食まで計5食を同じ席でとる。

4人がけで、フランス人の若い夫婦と初老のオーストラリア人が
同じテーブルになった。初対面の外国人と同席、というより
日本でも食べたことのないようなフレンチのコースに少し緊張する。

お互い簡単な自己紹介から始める。
フランス人夫婦はメルボルンの大学で職を探している最中、休みを利用
してパースの知り合いに会いにいくそうだ。新婚旅行も兼ねている。
初老のオーストラリア人は、シドニーに住んでいてひとり旅だ。

このときは、パースについたあとも、偶然出会ったこの4人で
旅を続けることになるとは思いもよらなかった。

記:根本

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