ツアー3日目の日中は北京郊外への観光だった。
バスにゆられて90分、明の十三陵とよばれる明の皇帝の
陸墓群についた。第三代永楽帝の墓もある。
着工から完成まで200年、広さは40kmにも及ぶというから
日本とは規模が違う。新宿から八王子まで延々と13人の墓が
並んでいるようなものだ。
次に万里の長城に向かう。北京からは一番メジャーなもので
八達嶺(バーダーリン)長城だ。10数年後、同じく北京郊外
の別の長城に足を運ぶことになるが、そこは幅が1mほどで、
草が背丈ほど生え放題であちこち崩れていた。裏山のがけといった
風情で誰も歩く人はいない。長城と言っても様々なものがある。
ここの長城はもともと馬が4頭横並びで歩けるように造ったもので
広い中国で一番有名な観光地ゆえきちんと整備もされている。
写真でよく見る光景が広がっている。観光地に来ると自然と確認
してしまう、「写真でよく見る光景に会えた」満足感はあった。
だがこの長城より印象に残ったことが3つある。
到着の少し前、車窓から奇妙な看板を目にした。
万里の長城が建設中とある。修復中ではなく建設中だ。
なんと、観光のピーク時にさばききれないため、近くにもう一つ
「新品の万里の長城」を造っていた。これには仰天した。
日本のGWにあたる労働節とよばれる休暇には、近くの高速道路は
延々10kmも路駐のバスが並ぶという。混雑緩和という目的で
遺跡を新たに造ってしまう発想には驚いてしまう。
同じく車窓から、山に大きく掲げられた「緑化運動推進中」の看板が
見えたとき、少し違和感があったので目をこらしてみた。
こちらはなんと、岩肌を緑のペンキで全面に塗っている。
ガイドに聞けば、これも本気で「緑化」を推進しているのだという。
たしかに禿げた茶色が広がるよりは見た目は麗しくなるが、これも
発想の飛躍なのか、それともここではこれが普通なのか。
そして長城の観光をおえてバスに戻ると、長城の絵がはいった
Tシャツを手にした売り子たちが窓の下に集まって連呼した。
「これ千円、1枚千円、安いよ。日本円でいいよ」
日本語である。誰かが窓をあけたら、彼のボルテージはさらに
あがった。勢いに負けて財布から千円札を出すのが見えた。
すると、となりの売り子が2枚で千円と言い出した。
車内は点呼が始まり間もなく出発だ。エンジンがかかる。
買った人が隣の人にちょっと自慢気にTシャツを見せている。
まぁ千円だったらいいんじゃないか。そんなやりとりが
かわされたそのとき、この人に売ったばかりの売り子が
大声で叫んだ。
「20枚で千円!」
―なに!1枚50円か。
後ろの席から様子をうかがっていた僕は噴き出した。
「おい、1枚千円で買っちゃったよ…」
買ったシニアの悲痛な声に、車内は爆笑に包まれた。
記:根本
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