たくさんの野菜と向き合って、少し慣れたつもりだったが、
毎度心の置き場に困る場面があった。
間引きである。
芽が出たら全部最後まで面倒をみるならいいが、
そうはいかない。
何回かにわけて間引かないといけない人参をはじめ、
基本は育てる本数の数倍の種を蒔く。
人参でいえば、10本獲るには50本の芽が必要で、
50本の芽を出すには70粒は蒔かないといけない。
発芽率はだいたい70%だ。
間引くには、時期、間隔、頻度を作物にあわせて調整する。
ただ、理屈はわかってもいざハサミをもって向き合うと、
そう簡単に作業はすすまない。
まず、どれも皆、「俺を残してくれ!」と訴えてくる。
まよい箸ならぬ、まよいバサミがはじまる。
なるべく元気な奴を残したいが、何センチおきに間引くという
ミッションがあるので結構あんばいが難しい。
こいつを残すとあいつには消えてもらわなければならない。
そんな葛藤がつづく。
そしてもうひとつは、「なるべくたくさん獲りたい」という
煩悩とのたたかいだ。
間引きすぎて残ったやつが育たなかったらどうしよう。
失敗したくない気持ちが間引きの手をついゆるめてしまう。
昨夏の人参は間引きがあまく、結局どれも細いゴボウのような
出来となった。途中で失敗に気づき、あとから株間を広げたが
遅かった。タイミングよくだいたんに間引かないと太らない。
失敗をさけようとするのが失敗なんだ。
間引きたての極細人参をかじりながら、勝手にひとり、
菜園の奥に真理を見た気になっていた。
記:根本
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