一度観たいとずっと思っていた。
観覧は無料。倍率は50倍近いという。
10枚ハガキを書くこと3度目で当たったので幸運だろう。
50年以上、日本中を笑顔にしてきた『笑点』の収録だ。
子供の頃から日曜の夕方になると、親父が日テレに
チャンネルをあわせた。お袋はそれが終わるのにあわせて
晩ご飯の準備をしていた。
あの頃はたしか土曜日も学校があった。
週休2日制になる前の日曜日は今よりも輝いていた。
あのテーマソングは貴重な休みの終わりをつげる
チャイムだった。
当日、入場開始の3時間前に並んだ。親父は目が
悪いので出来るなら近くの席を取りたい。900席
のうち整理券は35番だった。
開始直前に親父たちとも合流していよいよスタートだ。
司会の昇太がすぐそばにきてオープニングを録った。
2本分をまとめてだ。今まで気づかなかったが、
映る観客は2週連続で全く同じ顔ぶれとなるはずだ。
大喜利が始まると、木久扇のボケに親父が笑っている。
「あらうまいじゃない」
円楽の返しにお袋も感心している。
収録中、思わぬハプニングもあった。昇太が出題の際、
「海産物に例えて」という条件を言い忘れて1問目が
終わったのだ。しかし回答者は皆、イカだの蛸だの、
全部きちんと海のもので答えていた。
出題のシーンだけ撮り直しだ。頭をかく昇太に事情を察した
会場は爆笑だった。
「こういうのは見にこないとな」
出題はあらかじめメンバーに知らされていたのだ。
50年欠かさず見続けてきた親父は満足そうだった。
それにしても1問1問が長い。放送の倍ぐらいの時間
をかけている。途中横を見ると、親父は目をつぶっている。
暗がりで観るのに疲れたのか。夢の中かもしれない。
帰り際、水道橋駅に向かう橋の上で親父がつぶやいた。
「一生に一度は観にくる価値があるな」
この笑顔が見れて僕は満足だった。
記:根本
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