素人菜園帳(42)

秋晴れが数日続いたのでいよいよ安納芋の収穫だ。

土が乾いたときに掘りだすほうが芋のもちがいい。
2週間ほどおいたほうが甘くなるそうだ。

芋ほりは小学生の時以来だから40年ぶりとなる。
静かなテラスでひとりわくわくしながら手で掘っていく。
芋を傷つけたくないのでシャベルは使わない。

土は普通の野菜用培養土ではなく、肥料分のない黒土と
腐葉土、赤玉のブレンドなので固くかたまっていて
手だとなかなか進まなかった。

幅65cm、深さ42cm、容量72リットルの
巨大プランターに3株植えてあるが、掘りやすい端から順に
土をかきだしていった。

―あれっ、なっ、ない…。

土がほぐれたところで芋づるを引き抜いたが、手ごたえが
全くない。つるの先、根の先に何もついていない。

芋づる式。

この言葉、市民権は得ているが、今回はあてはまらない
かもしれない。気にしないでほしい。

―お前はいったい今まで何をしていたのか。

思わず芋に語りかける。植えてから半年近くも経つのだ。

気をとりなおして掘り進めると、土の中から次々に
芋の皮のような塊とコガネムシの幼虫が出てきた。

―うーん、やはりなぁ。

時折ピンポン玉大の芋が出てくるも食害されたあとがある。
根の先端が細長く太い部分もあるが、先日まで毎日獲れた
シシトウのほうがマシな大きさだ。

もし昆虫を栽培しているのなら大成功のひとコマと
なるにちがいない。嫌な予感があたってしまった。

端から垂直に掘り下げたプランターは、まるで芋づるの
解剖実験のように真ん中の苗のエリアが見えている。

どうせこっちも同じだろう。
そう思ったとき、ぱらっと、小さな土の塊が崩れた。

―あっ、これはひょっとして。

急に鼓動が3割ましに打ち始めた。崩れた土壁の一部から
夢見た大きさの芋が少しのぞいているではないか。

―落ち着け。落ち着け。喜ぶのはまだ早い。

「チャンスのあとにピンチあり」が人生訓だった。
慎重すぎるほどやさしく丁寧に、少しずつ掘っていった。

―遺跡発掘みたいだな。

以前読んだ名作「古代への情熱」(シュリーマン自伝)がうかんだ。
妄想の中で自分を勝手に偉人と並べるのは得意だ。

―とったど~!

その苗からはスーパーで並べてもはずかしくない安納芋が4つ。
ゴボウのようなおまけも1つついていた。

小躍りしたいのをおさえて最後にもう一本、端の苗も掘ってみた。
だがこちらも最初と同じでまったくついていなかった。
トータル収穫率30%だ。

両端にコガネムシが卵を産みつけて、幼虫が端から食害したので
真ん中がかろうじて生き残ったのだろう。

見えを重視する素人菜園家は、
「自分でつくると実がなっている様子がわかり面白いです」
とわかったようなコメントつきで写真をSNSに投稿した。
その両隣が散々だったことにはふれなかった。

いいとこ撮り。

この言葉、まだ市民権は得ていないかもしれないが、
今回だけは見のがしてほしい。

記:根本

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