久しぶりに実家に帰った。
東京の西のはずれまで1時間半はかからない。
手土産は素人菜園で収穫した紅くるり大根や茎レタス、
加工した山くらげ、パッションフルーツなどだ。
到着するなり、待ってましたとばかり、温州ミカンの高所の収穫、
キンカンの鳥対策不織布がけ、レンジフードのフィルター替えなど、
次々に作業がふってきた。
「あなた便利よね~」
たしかにお袋が椅子にのってあぶなっかしく作業するより
こちらがひょいと手を伸ばすほうが早い。
だがもうすこし別の評価の仕方がある気もする。
今度は最近盛り上がっている菜園エリアを見ろという。
駐車スペースにプランターが並べられ、1坪ほどの地植えエリアにも
きれいにトンネルがかけられている。
ここ半年ほど、種や苗、菜園指南本や肥料、防虫ネットなどを
代わりにアマゾンで注文して届けてきた。
―故郷の親から自家製の野菜が届くとか、作り方を教わるとかは
よく聞くけど、うちは完全に逆だな。
そんな思いが浮かんでいるのを気にもせず、自慢げに続けた。
「どう?きちんとネットかけられているでしょ。プランターには
明からもらった「ハクサイ」の種を蒔いたんだけど
なかなか結球しそうにないわ」
見ると、同じ葉っぱがあちこちに植えられている。
結球するはずがない。全部「紅くるり大根」だ。
そういえばはくさいと大根、両方種を届けたのだった。
「あらいやだ。これ全部大根なの?
ほんと?いつ間違えたのかしら」
―いつってそりゃ、種袋を手にとったときでしょ。
主婦歴50年なんだから、葉を見て気づけよな~。
2種類同時に送ったのがまずかったかな。
「あとここに今から植えられるものないかしら」
地植えエリアの半分が何も植わっていない。
以前はこんな更地は手つかずのままだったが、
対抗心に火がついたのかもしれない。嬉しい傾向だ。
少しタイミングが遅いが、防寒すればまだ間に合う。
母のPCから玉ねぎの苗50本とニンニクの種球500g、
穴があいた玉ねぎ用のマルチと肥料をすぐ注文した。
数日後、ラインで動画が送られてきた。
「どう、うまく張れたでしょう」
どや顔がうかんだ。
はじめて畝をたてマルチをつかったのだ。
動画をとって送りたくなる気持ちもわかる。
マルチにしわがよっているのが気になったが
ひとりでよく頑張ったと思う。すごいね、と返す。
「この前もらったファッションフルーツも甘かったわ」
まただ。
カタカナが毎回微妙に、わざとと思いたくなるほどずれる。
今回もお隣さんにおすそ分けするとき、その表現で発信するのは
息子として恥ずかしい。間違えをやんわり指摘した。
すると珍しく即レスがあった。
「打ち間違いよ」
コーヒーを吹き出しそうになった。
タイプミスのはずがない。
それ「言い間違い」じゃない?
それとも「聞き間違い」?
再度つっこみたくなるのをなんとか我慢して
パソコンを閉じた。
記:根本
*いまの囲碁教室で満足できない貴方へ
究極の個人レッスンを目指す『上達の約束』
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。