天安門広場に通じる北京の大通りは、日本のそれとはだいぶ印象が違う。
まず幅が広い。片側7、8車線はあるだろうか。そして自転車が多い。
北京に到着した翌朝、寝ぼけまなこで部屋のカーテンをあけたとき、
最初眼下に川が流れているかと勘違いした。眼鏡をかけてよく見ると、
同じ方向に同じ色彩の服をきて走る何百台という自転車だった。
その自転車をよけるように車、そして大型バスが走る。
バスといっても日本の路線バスの2台分が連結されていて、
しかも超すし詰めだ。1台に150人は乗っている。活気あふれる
というより、みな全力で動いている。生きている。
鈴木さんを迎えにきた会社の車は、大通りを縫うように進んでいく。
遮音性の高い高級車の車内からは、外の様子が別世界のように見える。
「まさかMR.NEMOTOが今年入社した新人とはびっくりですよ」
「そうかのう、言ってなかったかのう。根本君はわが囲碁部で実力
トップクラスのホープなんじゃ。がははー」
中国総代表の千葉常務と鈴木さんが後部座席で旧交を温めるのを
助手席で背筋を伸ばして聴く。
ほどなくレストランに到着して5名での会食が始まった。
5名といっても、実質は4プラス1だ。
円形テーブルの話題は、中国の情勢、会社の経営の話に終始した。
話に耳は傾けるが、中身はまったくわからない。
もちろん意見を求められることもない。
自然と僕の興味は、次々と運ばれてくる本場の中華料理に移った。
格別美味な上海ガニを食するのに手間取ったため、それほど
退屈することなくこの時間を楽しめたのはよかった。
食後に鈴木さんを囲んで写真を撮ってもらう。
この10年後、商社に勤務しながら結局一度も駐在することなく「石音」
を起業する道を選んだ僕には、駐在員との交流を記念する貴重な1枚となった。
もちろんそのときは、そんな未来が待っているとは知るよしもなかった。
記:根本
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